小冊子『心のプリズム』

(本文より抜粋)

…ところが、いいお母さんと思われたい私は、息子にとってはちっともいいお母さんではありませんでした。

ちゃんとした子に育てたい、しつけも出来ない親とは思われたくない、そういう気持ちで一杯でした。

それなのに、子供は思いどおりに動いてくれない。

わかっていることだけど、それがもどかしく、つらい。

今、一生懸命子育てしているお母さんたちは、きっとそのはざまで揺れているのではないでしょうか。

「なぜあなたはそういうことをするの」

「なぜあなたはじっとしていられないの」

「なぜあなたはいうことをきいてくれないの」

毎日がなぜの嵐。

このなぜという気持ちが起こると、とたんに心の奥深く、暗い迷路に入りこんでしまうのです。

どっちへ行ったらいいのかわからず、出口の光も見えず、同じところをぐるぐる回ってしまうだけなのです。

(あとがきより)

コーチングを習いはじめの頃は、他人にはできても、身内にコーチングは無理と思っていました。

人の話は冷静に聞けても、家族、特に子供の話は感情的になってしまって失敗ばかりでした。

コーチングの基本は人の話を聞くことです。

私達は人の話を聞いているようでいて、次に自分が何を話そうかと考えていたり、聞きたいところ、必要な情報だけを聞きとって、あとは受けとらないというようなことも案外多いものです。

人の話を聞くというより、自分自身が聞きたいことを相手から聞き出そうとしていたのでは、心から聞いたことにはなりません。相手も聞かれたというような気持ちにはなりません。

人の話を心から聞くためには、その人の存在をまるごと受け入れることが必要です。

相手のそのままを認め、受け入れることは本当に大切なことなのです。

もし、コーチングに出会っていなかったら、きっと私は

「何言ってるの!」

「何でなの?」

「そんなのだめよ!」

そう言って息子の投げたボールを受けとめることもなく、はじき返していたと思います。